本文へ移動
世界と暮らしの疑問を整理する知識ポータル
世界・国際理解

中国・張掖の山はなぜ虹のような縞模様なのか 堆積した地層と鉱物の色

公開日

赤、黄、灰緑色の帯が斜面を横切る、中国・甘粛省の張掖の丘陵。七彩丹霞などの名で知られる景色ですが、誰かが表面を塗り分けたわけではありません。色の帯は山肌についた模様ではなく、地面の内部に重なる地層の断面なのです。

この景観を理解するには、三つの出来事を順に考えると分かりやすくなります。川や湖に色の異なる堆積物が重なったこと、地層が地殻の力で傾いたこと、そして侵食によって地表に現れたこと。色をつくった過程と、縞を見えるようにした過程は別々です。

今は乾いた丘に残る、白亜紀の川と湖

張掖の色鮮やかな丘を構成する主な地層は、白亜紀前期の新民堡層群に属します。中国側がUNESCOへ提出した暫定リストの資料では、景観をつくる地層を約1億1400万〜1億600万年前としています。現在の乾いた風景が、そのまま当時から続いていたわけではありません。

地層の材料は、川や湖の環境にたまった砂、シルト、泥です。シルトは砂より細かく粘土より粗い粒。水の流れる勢いや土砂の供給源が変わると、運ばれてくる粒の大きさや成分も変わります。

砂や泥は、上に積もる堆積物の重さで押し固められ、粒の隙間を鉱物が埋めることなどによって岩石になります。堆積時の環境の違いが、砂岩、シルト岩、泥岩の重なりとして残るのです。一つの斜面にある縞は、一度の出来事でついた模様ではありません。

赤も灰緑も生み出す、鉄を含む鉱物の違い

岩石の赤い色には、鉄の酸化物がよく関わります。鉄がさびると赤茶色になる現象に似ていますが、山全体が金属の鉄でできているわけではありません。粒の表面を覆う少量の鉱物でも、岩石全体の色に強く影響するのです。

張掖の地層には、酸化鉄だけでなく、粘土鉱物の中にある鉄や、炭酸塩・硫化物の形の鉄も含まれます。鉄の量だけでなく、どの鉱物に入り、どのような化学状態にあるかによって、色は変わります。

酸素の多い場所と乏しい場所では鉄の反応が異なり、埋没後に地下水が通ると、鉄が溶け出して別の場所へ移動することもあります。したがって、現在の色が堆積した瞬間の環境だけを示すとは限りません。埋まったあとの変化も、地層の色合いに重なっています。

したがって「赤は必ずこの時代、緑は必ずこの気候」と一色ずつ対応させることはできません。色の原因を特定するには、鉱物と地層の構造を調べます。見た目の鮮やかさと、地質の情報の多さは関係していても、色だけですべてが分かるわけではありません。

斜めの縞は、地層が積もったあとの変形

砂や泥の層は、最初から現在の山肌に沿って斜めに塗り重ねられたものではありません。堆積した地層が、のちに地殻の変形によって傾いたり、曲がったりしました。張掖の景観には、こうした褶曲や地層の傾斜が表れています。

地層の積み重なりが、斜面の縞になるまで
上段に水平に重なる五色の地層。下段では層が傾き、波打つ丘の斜面に斜めの帯として露出する。

堆積・傾動・侵食の関係を示した模式図です。色は層を見分けるためのもので、現地の鉱物組成や地層の順序を表しません。特定の露頭の復元図ではありません。

祁連山脈の周辺にある張掖は、チベット高原の拡大に伴う地殻変動の影響を受けてきました。プレートの境界から離れていても、大陸内部へ伝わる力で古い地層が傾き、現在の斜めの縞につながっています。

さらに、斜面がどの方向から地層を切るかによって、地表に出る縞の形も変わります。同じ傾いた層でも、谷の両側や丸い丘の表面では、線が曲がったように見えることがあります。縞の曲がりをすべて地層そのものの褶曲とみなすこともできません。

丸い七彩丘陵と、壁のような丹霞地形

張掖の周辺では、色鮮やかな丸い丘だけでなく、宮殿や壁を思わせる急な岩の地形も見られます。これらをまとめて「丹霞」と呼ぶ紹介もありますが、形をつくる岩石の性質には違いがあります。

七彩丘陵の比較的固まり方が弱い地層は、風化で細かくなりやすく、長く垂直な壁を保つとは限りません。なだらかな丘や細かい溝のある斜面へ変わる一方、侵食に耐える岩層では崖や柱が残ります。

色が似ていることと、同じ形に削られることは別です。景観を左右するのは、鉱物による発色に加えて、粒の結び付きの強さ、割れ目、水の流れる場所など。近くに異なる形の地形が並ぶのは、その条件がそろっていないためなのです。

乾燥地でも、丘を刻む水の仕事

乾いた場所の地形というと、風だけが岩を削った姿を想像しがちです。しかし、雨が少ないことは、流水の働きがないことを意味しません。短い雨でも地表を水が走れば、風化した粒を集め、細い溝を刻むことができます。

張掖では水、風、重力、凍結などの作用が重なって丘が削られてきました。植生が疎らなため、地層の色や細かな溝が露出しやすい点も景観の特徴です。植物に覆われていれば、同じ地層があっても、これほど広い面で縞を見ることは難しいでしょう。

張掖の縞模様は、古い川や湖が残した堆積物、鉄を含む鉱物の反応、大陸内部の変形、現在までの侵食が重なったものです。華やかな色の下には、水辺だった土地が押し上げられ、乾いた丘として削られるまでの、長い環境の変化が隠れています。

参考資料

関連する疑問

同じ分類の近い疑問へ進む