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チャリン峡谷の岩が城のように見える理由 地層の硬さと削られ方の違い

公開日

カザフスタン南東部のチャリン峡谷には、塔や城壁のように立ち並ぶ岩があります。「城の谷」と呼ばれる景観ですが、人が積んだ石造建築ではありません。もともと続いていた地層が削られ、残った部分が建物のような形になっています。

なぜ、斜面が一様に低くならず、塔や壁の形が残るのでしょうか。鍵になるのは、地層ごとの削られやすさと、水が集中する通り道の違いです。乾いた土地に見えるこの谷でも、形づくりに重要なのは水の働きでした。

「城の谷」は、大河の本流そのものではない

チャリン川は、天山山脈の地域からイリ川へ向かって流れ、途中で深い峡谷を刻みます。その周囲には、川へ合流する小さな谷も発達しています。

よく写真に登場する「城の谷」は、チャリン川の本流に達する枝谷です。谷底を歩いて最後に大きな川へ出る地形であり、城のような岩の間を常に本流が流れているわけではありません。

本流を刻む水と、枝谷を削る水は、同じ流れではありません。前者は継続的に流れ、後者は雨や雪解けのときに一時的に集まるなど、峡谷群の中でも場所によって侵食の条件が異なります。

砂岩だけではない、湖の堆積物の重なり

赤みを帯びた崖を見ると、一枚の厚い砂岩が広がっているように感じるかもしれません。しかし、チャリン国立公園の地質解説は、粘土質の層に砂岩や礫、石灰分を含む泥質の層などが挟まる構造を説明しています。

静かな水中に細かな粘土が積もった時期もあれば、砂や礫が流れ込んだ時期もありました。湖や周辺の水深、流入条件が変わるたびに材料が変わり、その履歴が現在の崖の層として残っています。

さらに、下には古い火山岩も現れます。峡谷のすべてが同じ年代の同じ岩石ではありません。「何千万年前の峡谷」という一つの数字だけでは、岩石ができた時期、堆積物が積もった時期、谷が削られた時期を区別できなくなります。

古い地層が見えるからといって、目の前の塔の形までその時代から存在したわけではありません。材料をつくった時間と、現在の彫刻のような形へ削った時間には、隔たりがあります。

硬い層が残り、弱い層から削れる仕組み

地層の抵抗力は、粒の大きさだけで決まりません。粒同士を結び付ける成分や固まり方、割れ目の密度、水を吸ったときの変化などが関係します。隣り合う層でも、同じ速度で削れるとは限らないのです。

上に比較的削られにくい層があると、その下がある程度守られ、張り出した屋根のような形が残ることがあります。周囲の弱い部分が先に削られれば、壁だった部分が細くなり、独立した柱に近づいていきます。

岩を積み上げるのではなく、周囲が削れて塔になる
強い層と弱い層が重なる地面が侵食され、二つの塔状の形が残る。青い矢印が塔の間の溝を流れる水を示す。

差別侵食の一例を示した模式図です。現地の地層の順序や厚さを写したものではなく、すべての岩塔に硬い帽子状の層があるわけではありません。割れ目や崩落も実際の形を左右します。

ただし、城の谷のすべての塔に、同じ厚さの硬い帽子が載っているわけではありません。層の傾きや割れ目、水の通り道も異なるため、壁、柱、尖った岩など、形に幅があります。図の単純な仕組みを、現地の全地形にそのまま当てはめることはできません。

削られている部分だけでなく、残っている部分にも理由があります。谷の風景は、侵食の強さと岩石の抵抗力を組み合わせた結果なのです。

乾いた谷を変える、短時間の流れと崩落

雨が降ると、普段は乾いた谷へ斜面の水が集まり、小さなくぼみに流れが集中します。くぼみが深い溝へ成長するほど、その間に残った地層は細長い壁や塔として際立ちます。

水は粒を直接運び去るだけではありません。斜面の下部を削れば上部の支えが弱くなり、岩や土の塊が崩れ落ちます。崩れた材料を次の流れが運び去ることで、谷壁の後退が進みます。

風や気温変化による風化も無関係ではありませんが、巨大な谷の形成を「風が吹き付けて削った」だけで説明するのは不十分です。現地の地形研究は、河川や一時的な流れによる侵食、風化、斜面の変化が組み合わさる景観として扱っています。

一見すると時間が止まった岩の城も、完成品ではありません。現在残っている柱が崩れ、その奥の壁に新たな溝が生まれることもあります。塔の形は、削られる過程の途中で現れた姿です。

乾燥した崖の下に、川沿いの緑が続く理由

チャリン地域では、乾いた斜面と、川沿いの植物がつくる緑の帯が対照をなしています。同じ空から同じ雨を受けている近距離の土地でも、水の得られ方が違うためです。

本流は上流の山地から水を運び、低い河谷へ集中させます。川岸ではその水や地下水に植物がアクセスできる一方、高い斜面には同じ条件がありません。地域の乾燥した気候と、谷底の比較的湿った環境は両立します。

ユネスコのチャリン生物圏保存地域の解説も、峡谷、乾燥地、草原、河畔のトネリコ林を含む環境の多様さを挙げています。ただし、城の谷のすぐ脇にすべての植生が集まっているという意味ではありません。保存地域の広い範囲には、水との距離が異なる環境が組み合わさっています。

地層の強弱に沿って削られた岩の城と、本流の水に支えられた緑の帯。乾燥した土地の対照的な景観は、どちらも水の通り道と深く結び付いています。峡谷の岩だけでなく、谷底へ視線を移すと、その関係がいっそう鮮明になります。

参考資料

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