ポルトガル南部のリア・フォルモサでは、細長い砂の島々が海岸の沖に並び、その内側に浅い潟が広がっています。島と島の隙間を通って、潮が潟へ入り、また海へ戻る。地図に線を引けば静かな輪郭ですが、実際には砂と水が絶えず動く場所です。
島が形を変えるのは、島全体が海に浮いて漂うからではありません。ある場所の砂が削られ、別の場所へ積もることで、陸地の輪郭や潮の出入口が移っていきます。
外海と潟を隔てる、砂の防波堤
このような地形は、バリアー島、あるいは砂州島と呼ばれます。外海に面した側では波が直接岸を洗い、内側ではその力が弱まるため、潟や干潟、塩性湿地が発達しやすくなります。島は海と陸の間の壁ですが、水を完全にせき止める壁ではありません。
島の切れ目の潮汐口では海水が出入りし、バリアーの一部は本土とつながった半島状になっています。島だけを数えても、この環境の仕組みはつかめません。島・半島・潮汐口・潟が組み合わさって、外海との水の交換を決めるのです。
外海が荒れているときでも、内側は同じ波の強さとは限りません。だからこそ潟の内外では、砂や泥のたまり方、生き物の生息場所、人の利用方法が変わるのです。
斜めに来る波が、砂を海岸に沿って運ぶ
波が岸へ斜めに打ち寄せると、砂は海岸に沿う方向にも動きます。ただし、波向きが変わるため、同じ方向へ同じ量が運ばれ続けるとは限りません。長い期間に入ってきた砂と出ていった砂の差が、島の伸びる場所と痩せる場所を分けるのです。
島の片端で砂が失われ、反対側で増えれば、島が横へ移動したように見えます。しかし同じ砂粒が全部まとまって移るわけではありません。海底や隣接する浜を含む、広い範囲とのやり取りです。
このため、一地点の浜が広がったからといって、リア・フォルモサ全体の砂が増えたとは限りません。隣の場所から移ってきた可能性もあり、岸の変化は区間同士のつながりを含めて説明する必要があります。
砂と潮の接続模式図で、実際の島数・海岸線・流量や方位ではありません。砂の移動方向は波向きなどで変わり、嵐の越波では島を横断する移動も起こります。
潮の出入口が、簡単には砂で閉じない理由
波だけが働けば、島の隙間へ砂が運ばれ、開口部が狭くなることがあります。ところが潮が満ち引きするたび、潟の水はその隙間を通り抜けなければなりません。狭い場所へ流れが集中すると、底の砂を動かす力が強くなります。
つまり潮汐口では、砂を寄せる波の働きと、砂を運び出したり流路を掘ったりする潮流の働きが競っています。潮汐口は空いた穴ではなく、流れによって維持される地形なのです。
その釣り合いが変われば、開口部が横へ移動したり、別の場所に開いたり、古い場所が閉じたりします。リア・フォルモサで行われた観測研究でも、潮汐口の移動と、その周囲の砂の変化が重要な研究対象になっています。
嵐の波が島を越えて、潟側へ砂を運ぶ
砂の移動は、海岸に沿う方向だけではありません。高波や水位の上昇が低い部分を越えると、海側の砂が島の内側へ運ばれることがあります。これは越波に伴う土砂移動で、砂の島が陸側へ姿を変える仕組みの一つです。
一度の嵐で目立つ変化が起きる場合もあれば、その後の穏やかな波で浜が組み替わる場合もあります。短期間の写真だけでは、変化が一方向に続くのか、一時的なものかを判断しにくい。研究で複数年の測量や航空写真を使うのは、そのためです。
海面の変化も重要ですが、すべての岸の移動を海面上昇だけに結び付けることはできません。砂の供給、波向き、嵐、潮汐口の位置が組み合わさって、各区間の変化になります。
出入口を固定すると、隣の浜にも影響
船の通航などのために、潮汐口を掘ったり構造物で位置を保ったりすると、利用しやすさは高まります。一方、砂の通り道や潟への水の出入りも変わるため、工事した一点だけで影響が終わるとは限りません。
自然保護でも、島の輪郭を過去のある一日に固定すればよいとは言えません。動く砂によって砂丘、干潟、浅い水路が入れ替わること自体が、この場所の性質です。リア・フォルモサの地図は、完成形の記録というより、長く続く砂と潮のやり取りの一時点を示しています。