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マルタ島は川が少ないのにどこへ雨水がたまるのか 石灰岩の地下水と帯水層

公開日

地中海のマルタ島には、一年中流れ続ける大きな川がありません。それでも雨が地面から消えてなくなるわけではなく、一部は石灰岩の地下へ入り、水資源になります。では、その水はどこにたまるのでしょうか。

巨大な地下湖が一つあるのではありません。岩石の隙間や割れ目を満たす地下水があり、さらにマルタでは、粘土層の上にたまる水と、海面付近で塩水の上に広がる淡水を区別する必要があります。地下の地層の重なりが、水の居場所を分けているのです。

川が少なくても、雨水には複数の行き先

降った雨の一部は地表を流れ、一部は蒸発したり植物に使われたりします。残る一部が地面へ浸透し、地下水を補います。雨水を貯水槽へ集める場合もあり、降水量のすべてが自然の帯水層に入るわけではありません。

マルタの谷には、強い雨の後などに流れる水があります。「大きな恒常河川がない」と「地表を水がまったく流れない」は違います。乾いた谷を見て、そこに水の働きがなかったと判断することはできません。

また、舗装や建物で覆われた場所では、土や岩の露出した場所と雨水の動きが変わります。小さな島でも、地表の使い方と地下水の補給は無関係ではないのです。

地下水は、石の中の隙間を満たす水

石灰岩には小さな隙間や割れ目があり、水を蓄えたり通したりできます。水を利用できるほど通す地層を帯水層と呼びますが、地層全体が空洞という意味ではありません。大部分は岩石で、その内部の空間に水が入っています。

地下に水があると聞くと、洞窟の湖を思い描きがちです。しかし、マルタの水・エネルギー庁の解説も、地下水を岩石中の隙間に存在する水として説明しています。

では、井戸で水をくみ上げると、何が起こるのでしょうか。大きな水槽が一様に空になるのではなく、周囲の岩石の隙間から井戸へ水が移動します。水を蓄える量だけでなく、この移動のしやすさも利用できる量を左右するのです。

粘土に支えられる地下水と、塩水上の淡水レンズ
上段は石灰岩へ浸透した雨水が粘土層の上にたまる断面。下段は海面近くの石灰岩の中に淡水レンズと、その下の塩水がある概念断面。

二つの帯水層の仕組みを別々に示す模式図です。淡水・塩水は岩石の隙間を満たし、境界には混合帯があります。地層の厚さ、水位、塩分分布は実測ではなく、同じ場所に上下二図が重なるとは限りません。

粘土層の上に浮かぶ、高い位置の地下水

マルタの地層には、上部の石灰岩の下に、水を通しにくいブルー・クレイと呼ばれる粘土層が分布する場所があります。上からしみ込んだ雨水は、その層を簡単には通り抜けられず、上側にたまります。

宙水を高い位置で保つのは、雨水が落ちていく経路を途中で抑える粘土層です。海面に接していなくても水がたまりますが、完全に閉じ込められるとは限りません。地層の境界が斜面に出る場所では、湧き出すこともあります。

島全体に同じ厚さの粘土が水平に一枚続くわけではありません。地層の分布や断層、侵食によって、この種の帯水層を持つ場所は限られます。高地だからどこでも水がたまる、という意味ではないのです。

海面付近では、淡水と塩水の密度差が働く

別の重要な地下水は、下部の石灰岩に広がる、海面付近の帯水層です。海とつながる地下では塩水が存在しますが、雨から補給された淡水は塩水より密度が小さいため、その上側にレンズ状に分布できます。

ここでも、淡水のかたまりが空洞の中に浮いているわけではありません。同じ岩石の隙間を満たす水が、場所によって淡水から塩水へ変わります。両者の間には混ざり合う帯があり、ガラス板のような境界があるわけでもありません。

水を過剰に取り出すと淡水側の水位が下がり、塩水の影響が強まる可能性があります。地下に水が見つかることと、塩分の少ない水を継続して利用できることは、別の条件なのです。

地下水だけに頼らない、島の水供給

マルタでは地下水に加え、海水の淡水化、雨水の利用、用途に応じた再生水などが水供給に関わっています。川が乏しいから住めないわけでも、地下水があるから不足の心配がないわけでもありません。

粘土の上にたまる水は地層の重なりに、海面付近の淡水は海との密度差や補給量に制約されます。同じ島の地下水でも、減り方や塩水との関係を一つの仕組みで説明できないのです。

マルタの雨水の行方を知るには、地図の青い川だけでなく、石灰岩と粘土の上下関係まで見る必要があります。見える水路が少ない土地にも、地層に沿って蓄えられ、ゆっくり動く水があります。

参考資料

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