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ダナキルの地面が鮮やかな色になる理由 熱水・塩・硫黄がつくる鉱物

公開日

エチオピア北東部のダナキル低地、とりわけダロルの熱水域には、黄、緑、橙、褐色の水面や地面が現れます。火山の近くなので「黄色は全部硫黄」と説明したくなりますが、実際には鉄の成分も色を生み出しています。

重要なのは、塩分の非常に濃い熱水に含まれる鉄です。地下から出た水が空気に触れ、蒸発し、鉱物を析出させる。その途中の状態の違いが、隣り合う池や塩の表面に異なる色をつけています。

鮮やかな地表の土台となる、厚い塩の堆積

ダナキル低地には、水が蒸発して残った塩類の地層があり、熱水はそれらや火山岩から成分を取り込みながら地表へ現れます。地中に熱があることだけでは、この濃い水の組成を説明できません。何を溶かしてきたかも重要です。

ダロルの地表で目立つ柱や縁取りには、食塩の主成分でもある岩塩の結晶が多く含まれます。温度の変化や蒸発によって結晶が成長し、その上に少量の着色成分が重なる場合もあります。大きな造形をつくる物質と、目に入る色を決める物質は、必ずしも同じではありません。

緑から黄、褐色へ変わる鉄の化学

2019年に発表された現地の化学分析では、湧出口から池へ続く水の中で、鉄の状態が変わることが調べられました。地下から出た水に多い二価の鉄が、酸素との反応によって三価の鉄へ変わり、周囲の成分との組み合わせも変化します。

濃縮と反応が進み、鉄を含む酸化物や水酸化物、硫酸塩などが析出すると、黄から橙、褐色の沈殿が現れます。水に溶けた鉄と後に生じる固体の両方が関わるため、色をそのまま水温の目盛りにすることはできません。

柱や花のような塩が、熱水の出口を縁取る仕組み

塩の結晶は、岩塩の塊を一度削って彫刻したものとは限りません。成分を多く含む水から新たに結晶が成長し、流れの縁やガスの出る場所の周囲へ積み重なります。水の通り道が、固体の形として残る場合があるのです。

ここでは、物質を溶かして運ぶ作用と、再び固体として置いていく作用が、近い場所で起きています。同じ熱水でも、温度や濃度の変化に応じて働きが変わるため、白い結晶の成長とその表面の着色を、別々に考える必要があります。

色の濃い薄膜が表面を覆うと、岩全体がその色の成分でできているように見えます。しかし、塩の造形の骨格と着色する鉱物の量は同じではありません。見た目の鮮やかさが、その成分の重量比を示しているわけでもないのです。

流れる熱水の化学変化が、池と結晶の色を変える
段状の池を通る熱水が、酸素との反応と蒸発で変化する模式断面。緑、黄、褐色は鉄の状態の変化に伴う色の例。

分析結果に基づく概念図で、全ての池が同じ順序・速度で変色する意味ではありません。色は水温の目盛りではなく、現地の形状や測定色も再現していません。

黄色を見ただけでは、硫黄と決められない理由

ダロルには、硫黄を含むガスや硫黄そのものも存在します。しかし、黄色い水や表面の着色を一律に硫黄の堆積とみなすことはできません。鉄を含む溶液や鉱物も、黄色を示すからです。

現地研究では、試料に光を当てて応答を調べる分析や、結晶構造を調べる分析が用いられています。見た目の色は調べる出発点にはなりますが、成分を確定する答えではありません。同じ黄色でも、水に溶けた成分の色なのか、固体の粒の色なのかで、起きていることが違います。

熱水の色が、微生物の色とは限らない

温泉の鮮やかな帯が、微生物の集まりによってできる場所もあります。それを知っていると、ダロルの緑色も藻や細菌の色に見えるかもしれません。しかしダロルでは、無機的な化学反応が色を生む重要な役割を担っています。

2019年の微生物調査は、周辺の塩分の多い環境と、極端に酸性で塩分の濃い池とを分けて検討しました。ある場所に微生物がいることから、隣の池も同じ条件だとは判断できません。また、色だけで生命の存在を示すこともできないのです。

同じ場所でも固定されない、池と鉱物の模様

熱水の出口が変われば、水が届く場所も変わります。流れが止まった池は乾き、新しい出口では塩が成長する。複数回の現地調査では、活動域や水面の状態が変化する様子も記録されています。

したがって一枚の写真は、恒久的な色分け地図ではありません。熱水が現在どこを通っているか、どれだけ空気に触れ、蒸発が進んだかという途中の姿です。ダロルの鮮やかさは、完成した鉱物標本の陳列ではなく、溶解、流出、酸化、結晶化が続く地表の変化なのです。

参考資料

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