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フェアリーサークルはなぜ丸い空白になるのか 乾燥地の水と生きものをめぐる研究

公開日

草原に、誰かが円を描いて草を抜いたような空白が並ぶ。ナミビアの乾燥地で見られるフェアリーサークルは、名前の不思議さ以上に、植物の生え方が規則的になる点で研究者を引きつけてきました。

原因として有力なのは、シロアリの活動と、植物同士の水をめぐる競争です。ただし、どちらか一つで決着したとはいえません。同じ円を見ても、草が枯れた原因と、円が離れて並ぶ理由では、確かめるべき証拠が違うからです。

穴ではなく、植生のない丸い場所

フェアリーサークルの中心は、地面が深く陥没した穴ではありません。周囲には草があるのに、中央には植物が乏しい、という植生の模様です。丸い形をした火口や塩の結晶とは、出発点が異なります。

一つの円だけでなく、広い範囲で似た空白が繰り返されることも重要です。草を枯らす原因を一つ見つけても、それだけで模様全体の間隔まで説明できるとは限りません。小さな根の観察と、空から捉えた分布を結びつける必要があります。

シロアリ説が重視する、根と土の中の水

シロアリ説では、砂にすむシロアリが植物の根を食べ、中心の草を除く作用を重視します。草がなければ、植物が吸い上げて葉から失う水も減るため、地中に湿り気が残りやすくなるという説明です。

ハンブルク大学の研究者は、シロアリの存在や土壌の水分、砂の水理的な性質を根拠に、この説を支持しています。中央の裸地は単なる被害跡ではなく、乾燥地で水を保持する環境にもなる。動物が自らの生活場所を変える、という見方がここにあります。

植物の競争説が重視する、雨の後の変化

一方、植物の自己組織化という説では、限られた水をめぐる競争が、草の密な場所と裸地の分布を生むと考えます。全体を配置する司令塔がなくても、近くの植物や土壌との相互作用が積み重なれば、規則性のある模様が現れ得るのです。

2024年の研究は、ナミビアの円の変化と降雨、土への水のしみ込み方を調べ、この説明を支持しました。雨の増減に対して円がどう変わるかは、完成した模様の写真だけでは得られない情報です。

両説は、水が大切だという点では共通しています。対立しているのは、草が失われる直接の原因や、水が土の中をどの速さで動くのかという部分。片方の研究者が「解決」と発表しても、異なる観測と解釈が出ている以上、その宣言だけで議論を終えることはできません。

同じ裸地の円に対する、異なる原因の仮説
上段は草地の中の裸地の円。下段は、シロアリによる根の除去と、植物の水をめぐる競争という二つの仮説を区別している。

ナミビアの原因を確定した図ではありません。青矢印は水をめぐる競争の概念で、実測した地下水の流速や移動距離ではありません。

丸い模様を再現する計算と、現地での証明の違い

計算モデルで似た円ができることは、その仕組みが可能だという手がかりになります。しかし、現実の円が必ず同じ仕組みで生じたとまではいえません。違う原因から、よく似た形が生まれる場合もあるからです。

根が食べられた痕跡、雨後に草が弱る順序、土の深さごとの水分、シロアリの分布。こうした観測を重ね、各説が予想する変化と突き合わせることが必要です。見た目の一致より、途中で何が起きているかの方が、原因の判別には強い証拠となります。

裸地が、乾燥地の水の蓄えになるという逆説

植物のない場所は、いつも植物のある場所より乾いているのでしょうか。地表の見た目だけでは決まりません。雨水が地中へ入り、草が吸い上げて失う量が少なければ、裸地の下に水が残る可能性があります。シロアリ説は、この水分保持を生息環境の形成と結び付けています。

一方、地表で水がしみ込む速さと、地下を横へ移動する速さは別です。自己組織化の説明を検討する場合も、水がどこへ、どの時間内に移るかを確かめなければなりません。「円の中心は草がない」という観察から、水の量や移動方向まで一足飛びには決められないのです。

別の大陸の円まで、同じ原因とは限らない

オーストラリアにも似た裸地の模様があり、2023年の研究は先住民の知識と現地調査を組み合わせ、シロアリの構造物との関係を示しました。ただし、別の土地の結果を、そのままナミビア全体の答えへ置き換えることはできません。

砂の性質、植物、昆虫、降雨が違えば、同じ呼び名の円でも成り立ちが一つとは限りません。ナミビアの円を説明するには、ナミビアで根が傷む順序や土壌水分の変化を確かめる必要があります。不思議な形の正体を追う研究は、最後には地面の下の小さな変化へ戻ってくるのです。

参考資料

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