砂丘といえば、海岸や砂漠の風景を思い浮かべるかもしれません。ところが北米のミシガン湖では、淡水の湖岸に大きな砂丘が連なっています。砂を用意したのは氷河と湖の波、それを陸へ積み上げたのは風です。
ただし、湖面から高くそびえる斜面のすべてが、風で積もった砂とは限りません。スリーピング・ベア砂丘には、氷河が残した高台を土台に、その上へ砂が重なった場所もあります。砂丘の高さと、砂の層の厚さは別なのです。
砂の供給源となった、氷河の置き土産
ミシガン湖周辺は、過去の氷期に大きな氷床に覆われました。流れる氷は岩盤を削り、岩石や砂、泥を取り込み、別の場所へ運んでいます。氷が後退しても、運ばれた堆積物までは消えません。
とくに氷河の縁でたまった土砂は、モレーンと呼ばれる尾根や丘をつくりました。現在の湖岸の高台には、その名残があります。砂丘の材料は、風が一から岩を粉砕してつくったものではなく、氷河が残した大量の堆積物から選び出された部分です。
湖岸で砂をより分ける、波と沿岸の流れ
風で起きた湖の波が崖の裾を削ると、上にあった土砂が崩れ、砂や礫が湖岸へ供給されます。それを別の場所へ移すのが、岸に沿う流れ。崖の前に落ちた砂が、近くの湾の浜へ運ばれることもあるのです。
この過程で、粒の大きさによる選別が進みました。細かな泥は水中に漂って沖へ運ばれやすい一方、砂は岸近くに残りやすく、重い礫はさらに動きにくいもの。風が扱いやすい砂が、波打ち際の周辺へ集まるわけです。
西からの風が、東岸へ運ぶ乾いた砂
ミシガン湖の東岸では、西寄りの風が湖から陸へ吹きます。浜の表面が乾けば、砂粒は風で跳ねたり転がったりして内陸へ移動できます。海水の塩分は、この運搬に必要な条件ではありません。
草の株や小さな起伏に出会うと、風の勢いが局所的に弱まり、砂がたまります。できた小山が次の砂を捕らえ、さらに大きく育つ過程です。ただし、同じ場所がいつまでも成長するとは限りません。植物が失われて砂が露出すれば、今度は風に削られる側へ変わり得ます。
湖岸の高い地形に載る砂丘の模式例です。特定地点の断面ではなく、浜の近くに発達する砂丘もあります。色の境界は実測した地層境界ではありません。
浜から育つ砂丘と、高台に載る砂丘
浜の砂が陸へ運ばれて育つ砂丘は、湖面に近い場所から始まります。一方、スリーピング・ベアの高台では、氷河堆積物から吹き上げられた砂が台地上に重なりました。こちらは英語で「perched dune」と呼ばれる型です。
見上げた斜面が非常に高くても、その高さには元の高台が含まれます。山のような地形を丸ごと風の作品と考えると、成り立ちを取り違えてしまうでしょう。氷が築いた土台、湖が削った崖、風が載せた砂という、三つの働きの重なりが重要なのです。
砂を供給しながら、砂丘の足元も削る湖
波による侵食は、砂丘に材料を与えるだけではありません。高台の裾が削られて後退すれば、その上の砂丘も支えを失います。砂が斜面を落ち、風に再び運ばれるため、砂丘は大きくなる一方ではないのです。
湖の水位の変化も、浜の広さや崖へ波が届く頻度に影響します。砂丘の輪郭は、風向きだけで決まるものではありません。氷河時代から受け継いだ材料を、湖と風と植物が繰り返し配置し直している風景です。