白いグリーンランド氷床の上に、夏になると鮮やかな青い湖が現れます。岩のくぼみにたまった普通の湖ではありません。雪や氷が融け、その水が氷の表面の低い場所へ集まった「氷河上湖」です。
しかも、その水は冬まで同じ場所に残るとは限りません。表面の川へあふれる湖もあれば、割れ目から氷の内部へ急速に抜ける湖もあります。氷床は水を通さない白い板ではなく、季節によって排水の仕方が変わる立体的な場所なのです。
氷の表面に刻まれる、川と湖の集水域
氷床の表面は、遠くから見るほど平らではありません。わずかな傾斜やくぼみがあり、融け水は重力に従って低い方へ流れます。小さな流れが集まれば川になり、出口の低いところまで水位が上がらないくぼみには湖ができます。
NASAは、グリーンランド西部では表面の融け水が川や湖の網をつくる一方、南東部の一部では、締まりかけた雪の層の内部に液体の水が保持される仕組みを紹介しています。氷床のどこでも同じ排水路ができるわけではなく、雪の量や氷の状態による違いがあります。
青さは、空を映すだけではない
湖の青さに関係するのが、水による光の吸収の違いです。赤い光は青い光より速く弱まるため、氷や雪の白さと対照的な色が目立ちます。ただし、同じ水でも色の濃さは一様ではありません。水深や底の明るさによって、衛星から届く光の見え方も変わります。
その性質を利用し、光の反射から湖の深さを推定する研究も行われてきました。ただし、濃い青をすべて深い液体の湖と決めつけることはできません。NASAの航空写真には、冬を越して凍った青い湖も写っています。色だけでなく、撮影時期や表面の状態を合わせて判断する対象です。
特定の湖の排水路の復元ではありません。湖底の亀裂から急に抜ける経路、表面での貯留や再凍結などもあり、全湖がこの順序をたどるわけではありません。
表面の川とは異なる、氷の中への出口
氷の割れ目に水が入り、その重さによる圧力で亀裂が深く伸びると、湖の水が内部へ抜ける道ができます。別の入口は、表面の流れを飲み込むムーランと呼ばれる縦穴。滝のように見える入口の下で、水の道は氷の厚さ方向へ続いています。
ムーランは、氷床の下にある火山が熱で開けた穴という意味ではありません。融け水や割れ目、流れる氷の変形に関わる排水地形です。すべての湖にこうした穴があるわけでもなく、縁を越えてゆっくり排水する湖、再び凍る湖も区別しなければなりません。
水の行き先を、湖の消失だけでは決められない理由
氷の表面から湖が消えたとしても、直ちにその水がすべて海へ到着したとは限りません。氷の内部や底面を通る途中には、水を一時的に蓄える場所があり、再凍結する部分もあります。表面の水面の変化と、海へ流出した水量は同じ観測ではないのです。
底面へ届いた水は、氷と岩盤の接触や水圧を変え、氷の滑りにも関係します。ただし、排水路の発達によって水が抜けやすくなることもあり、「水が多いほど常に同じ割合で氷が速くなる」という単純な関係ではありません。
同じ場所に戻る湖と、動き続ける氷
氷そのものは流れていても、湖が似た場所に繰り返し現れることがあります。NASAが紹介したストルストロムメン氷河の湖も、その一例でした。氷床の下の地形などが表面の起伏へ影響すると、通過する氷は入れ替わっても、水の集まるくぼみは持続し得るのです。
白い表面の青い点は、単に夏らしい彩りではありません。水を集める地形、凍結と融解、氷の内部への通り道が交わる場所です。湖ができることと、湖が抜けることを分けると、氷床の水の循環が具体的に見えてきます。