アラスカのツンドラを上空から見ると、地面に大きな網目が広がっている場所があります。畑の境界でも、人工の排水路でもありません。その代表例が、凍った地面の収縮と地下の氷の成長でできる「アイスウェッジ・ポリゴン」です。
最初のきっかけは冬の割れ目で、春の水と再凍結が模様を育てます。ただし、その後も高低差が保たれるとは限りません。地下の氷が融けると周囲の地面が沈み、似た網目の中で、水のたまり方が逆になることもあるのです。
永久凍土の上にもある、夏に融ける層
永久凍土とは、地温が0℃以下の状態を少なくとも連続2年間保つ地盤です。地面全体が純粋な氷というわけではなく、土や岩、その隙間の氷などが含まれます。「永久」という名前でも、将来にわたり絶対に融けないという意味ではありません。
表面には、夏に融けて冬に凍り直す活動層があります。その下の凍土に長く残る氷と、毎年季節変化する表層を分けることが、網目の成り立ちを理解する出発点です。
冬の収縮で開き、春の水で埋まる亀裂
厳しい冷え込みで凍った地盤が収縮すると、亀裂が開くことがあります。春の融け水が入り込むのは、その狭い隙間です。水は冷たい地下で凍りますが、一度に大きな氷塊ができるわけではありません。最初に加わるのは、割れ目を埋める薄い氷の筋です。
寒い季節の亀裂と、水の侵入・凍結が繰り返され、氷の部分は次第に幅を増していきます。上が広く、下が細い断面。その形から「氷のくさび」と呼ばれ、地表ではつながる亀裂が多角形の網目を描きます。
低中心型と高中心型の関係の模式例です。くさびの幅や深さは実測ではなく、融解後の排水は隣の溝への接続などにも左右されます。
周縁が高く、中央に水がたまる多角形
氷のくさびが成長して周囲の地面を押すと、多角形の縁が盛り上がることがあります。縁に囲まれた中央部は相対的に低い場所。融け水や雨水がたまりやすい、この形を低中心型と呼びます。
中央と縁では、わずかな高低差でも土の湿り方が変わります。水面、湿った土、比較的乾いた縁が並ぶため、植物の生える場所も一様ではありません。空から見える色の差には、地下の氷の配置が間接的に関わっています。
氷が融けると、今度は縁が沈む
氷のくさびが融けて体積を失えば、網目の周縁が溝のように下がり、中央の土が相対的に高く残ります。これが高中心型への変化です。見た目には高い中央部でも、そこが新たに持ち上がったとは限りません。高さの差を生んだのは、周囲の沈下という場合があるのです。
溝同士がつながれば、水は網を伝って流れ出しやすくなる一方、出口のない場所には水が残ります。凍土が融ければ、必ず湖が増えるというわけではありません。新しい排水路が開くことで、地表が乾く方向へ変わる場合もあります。
多角形だけでは分からない、地下の状態
地面の網目には、乾燥収縮など別の仕組みによるものもあります。また、アイスウェッジの地形でも、すべてが同じ大きさや整った六角形になるわけではありません。割れ目の履歴、土質、積雪、地面の傾斜などが形を変えます。
研究では航空写真に加え、地表の高さ、地下温度、氷の位置などを調べます。多角形の線は、盛り上がった縁なのか、それとも沈んだ溝なのか。その違いを確かめることで、凍土が育った履歴と融けた履歴を区別できるのです。