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一万煙の谷はなぜ火山灰に覆われたのか カトマイの山と噴出口の位置の違い

公開日

アラスカの「一万煙の谷」は、その名のとおり無数の火山が噴煙を上げてできた場所ではありません。1912年の大噴火で谷を埋めた熱い堆積物から、たくさんの蒸気が立ち上った景観に由来します。

もう一つ意外なのは、噴火の主な出口と、大きく陥没した山が別の場所にあったことです。マグマは主にノバルプタから噴出し、約10km離れたカトマイ山では山頂部が陥没しました。山の上に大きな穴があるからといって、そこが主噴出口とは限らないのです。

1912年6月、谷を埋めた熱い火砕流

1912年6月に始まったノバルプタの噴火は、20世紀最大規模の火山噴火として知られています。空高く上がった火山灰の一部は、遠くの風下へ運ばれました。一方、地表付近では、熱いガスと軽石、火山灰などの混合物が谷へ流れ下りました。

これが火砕流です。灰が空から静かに降り積もる現象とは異なり、大量の粒子を含んだ流れが低い土地へ集中します。米地質調査所によれば、谷では堆積物が100〜200mもの厚さに達した場所がありました。元の谷底は、短期間にまったく別の地表へ覆い替えられたわけです。

同じ噴火でも違う、降灰と谷を埋める堆積物

風に乗る細かい火山灰は、山や谷を越えて広く降ります。対して火砕流の堆積は地形の低い場所で厚くなりやすく、谷を埋める特徴が現れます。同じ噴火の産物でも、広がり方は一様ではありません。

地層を調べれば、粒の大きさや重なり、堆積する場所の違いから、当時の噴火の順序を復元できます。現場を直接見た人がいなくても、残された堆積物は、空と地表で起きた異なる過程を区別する証拠になります。

離れた噴出口と陥没地、谷を埋めた噴出物
上段は噴火したノバラプタと離れたカトマイ山の陥没。下段は谷に積もる火砕物と、余熱で上がる蒸気の概念。

地下の破線はマグマ系の関係を表し、通路の実測形状ではありません。二地点は約10km離れ、下段の蒸気は多数の独立した火山の噴火を意味しません。

ノバルプタで噴き、カトマイ山で沈んだ地下のつながり

噴火で大量のマグマが抜けた結果、カトマイ山の下では山体を支える条件が変わり、山頂部が陥没してカルデラができました。マグマの多くがカトマイ側に蓄えられ、離れたノバルプタで噴出した関係は、堆積物や岩石の研究から明らかになったものです。

地表の二つの穴を、単純な一本の空洞が結んでいたと断定することはできません。地下の形や移動の詳細は、直接見える配管のように確定しているわけではないためです。それでも、噴出と陥没が離れた場所で起きた事実は、火山を一つの円錐形の山だけで捉える限界を示しています。

「煙」の正体は、残った熱で生まれる蒸気

1916年にこの谷を調査したロバート・グリッグスらは、地面の割れ目から立ち上る無数の蒸気を目にしました。谷を埋めた厚い堆積物は、噴火後も長く熱を保っていたのです。

そこへ水が浸透すると加熱され、蒸気となって噴き出します。一つ一つの蒸気の柱の下で、新しいマグマが噴出していたわけではありません。熱い堆積物が冷えるにつれて蒸気の活動も衰え、「一万煙」という名が現在の見た目をそのまま表すものではなくなりました。

谷を埋めた後に始まった、川による掘り返し

噴火は短い期間に谷を埋めましたが、その後の川は新しい堆積物を削り始めます。削られた断面には、重なった火山灰や軽石の層が現れます。噴火でできた地表も、完成したまま止まってはいません。

一万煙の谷は、噴火の大きさだけを伝える場所ではないのです。離れた噴出口と陥没地、谷に集中した火砕流、堆積物に残った熱、川が刻む新しい谷。それぞれの時間の長さが違う現象を、一つの景観の中でたどれる場所です。

参考資料

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