オンタリオ湖から流れ出すセントローレンス川には、大小の島が密集するサウザンド諸島があります。大河の中にあるため、川が砂を積もらせた中州にも見えますが、この地域の島々の骨格は古い岩盤です。
カナダ楯状地と米国のアディロンダック山地を結ぶ岩盤の帯を、水が横切っています。島を一つずつ孤立した陸地と見るより、水面から頭を出した丘の集まりと考えると、なぜここに集中するのかが分かります。
大河と交差する、フロンテナック・アーチ
フロンテナック・アーチと呼ばれる地質的な帯は、北側のカナダ楯状地から南側のアディロンダック山地へ延びています。「アーチ」は、川の上に架かった一枚の自然橋という意味ではありません。古い岩盤が連続する地帯を表す名前です。
セントローレンス川は、五大湖の水を大西洋へ導きます。その川を横切っているのが、北西から南東へ続く岩盤の帯。サウザンド諸島の位置を決めたのは、水の道と古い地質のつながりが交わる場所だったのです。
氷河が削り出した、丸みのある岩の丘
この地域は氷河に覆われ、地表の堆積物が削り取られました。もともとあった古い山地の岩盤は、長い侵食に加えて氷の作用も受け、丸みのある丘として露出しています。
その低い部分を水が満たすと、高い部分だけが島になります。島の上で見える岩と、水面下に続く岩盤は切り離されたものではありません。陸と水の境界は、起伏のある地表を水面の高さで区切った線なのです。
個々の島の標高や配置を示す断面ではありません。氷河による侵食などで形成された複雑な起伏を、単純な山形に置き換えています。
砂の中州とは違う、島の芯と変化の速さ
砂や泥が積もった中州では、川が材料を運び直すことで、輪郭が大きく変わる場合があります。対してサウザンド諸島の芯は、古い岩盤。表面の土や浜には変化があっても、砂が集まってできた島とは基礎の性質が異なります。
もちろん、岩盤だから変化しないわけではありません。割れ目の風化や岸の侵食、水位の上下は続きます。ただ、島を生んだ大きな起伏と、現在の川が運ぶ砂を区別しないと、地形の時間の長さを見失います。
岩の起伏が生む、土と植物の細かな違い
露出した岩の上には、土が薄い場所があります。窪地には水や細かな堆積物がたまり、岸辺には湿地が発達するため、小さな範囲でも環境は一様ではありません。花崗岩質の地質や起伏が、植物の生える条件に反映されます。
五大湖の大きな水塊には、周辺の気候を和らげる働きもあります。公園に見られるのは、カナダでは分布が限られる植物や動物も含む生物相です。古い岩の帯に、湖の気候作用が重なった環境と言えるでしょう。
生きものにとっての足場と、水による隔たり
島の列が移動の足場になる生物もいれば、間の水路を越えられない生物もいます。同じ島々が、ある種には通路、別の種には境界という違いです。地質の連続だけで、すべての生物の行き来まで決まるわけではありません。
カナダの公園管理当局は、フロンテナック・アーチを生態系の重要な連絡帯として位置づけています。水の下に続く岩盤のつながりは、地質の話で終わりません。大河の入口に並ぶ島々は、陸上の生きものが移動する経路にも関わっています。