カナダのニューファンドランド島西部には、海底をつくっていた岩石だけでなく、その下のマントルに由来する岩石まで地表に現れる場所があります。グロスモーン国立公園のテーブルランドは、その代表です。
海面が下がって、深海の底がそのまま露出したわけではありません。古い海が閉じていく過程で、海洋側の岩石の一部が大陸側へ押し上げられ、長い侵食を経て見えるようになりました。そこには、消えた海の断片が残っています。
「海底の石」に含まれる、地殻とマントルの違い
「海底の岩石」は、海水に接した表面だけではありません。その下には、海底で冷えた玄武岩、マグマが通った岩脈、地下でゆっくり固まった斑れい岩などが続きます。冷えた場所や固まり方の違いが、海洋地殻の内部に重なっているのです。
さらに下にはマントルがあり、テーブルランドで目立つかんらん岩は、この深い部分に由来します。マントルは丸ごと液体のマグマの海ではありません。こうした岩石が一組として地表へ運ばれたものを、オフィオライトと呼びます。
実際の層厚やプレート配置の復元ではありません。テーブルランズで全層が一つの崖に連続して見える意味でもなく、変形や侵食を単純化しています。
沈み込むだけではなかった、古い海洋側の岩盤
かつてこの地域には、イアペトゥス海という海がありました。海洋プレートが沈み込んで海が狭まる過程で、すべての海洋側の岩石が地下へ消えたわけではありません。一部は上に残る側へ押し上げられ、大陸の縁に重なりました。
この「海洋側の断片が陸側へ乗り上げる」過程は、単に地面が真上へ隆起するのとは違います。横から押され、重なり、変形した履歴を含んでいるのです。現在の位置にある岩だけを見て、そこで最初から生まれたと考えることはできません。
山脈を削った後に現れた、深部の断面
岩石が大陸側へ移動しても、その瞬間に今の景色が完成したわけではありません。上に重なった岩が長い時間をかけて削られ、深い位置の岩石が地表へ近づきます。さらに後の氷河が谷を削り、岩の並びを露出させました。
グロスモーンの価値は、珍しい石が一点だけ転がっていることではありません。海底の岩から深い部分の岩までを比較し、元の構造や移動の履歴を検討できる点にあります。地殻とマントルの境界に相当する部分も、地表で研究できる場所なのです。
森の隣に広がる、鉄さび色の裸地
テーブルランドは、周囲の緑豊かな土地と対照的な、黄褐色から赤褐色の景観で知られています。かんらん岩に含まれる鉄が風化して酸化することが、その色に関わります。遠目に砂漠のようでも、乾燥だけでできた裸地ではありません。
岩石から生まれる土の化学的な性質は、植物にとって厳しい条件です。栄養分の偏りなどによって、多くの植物が育ちにくくなります。それでも適応した植物は生育しており、「何も生きられない岩」と表現するのは正確ではありません。
大陸移動を、岩石の組み合わせで確かめる場所
岩を一つ拾っただけで、海の開閉まで説明できるわけではありません。岩の種類、重なる順序、変形、年代、周囲との接触関係を組み合わせることで、元はどこにあり、どう移動したかを推定します。
グロスモーンは、そうした証拠が比較的狭い範囲にそろい、プレートテクトニクスの理解を支えてきました。今の海岸線よりはるかに古い海の底が、現代の陸上で見つかること。その一見矛盾する事実が、海と大陸の配置は固定されていないという地球の歴史を伝えています。