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桂林の山はなぜ塔のように並ぶのか 石灰岩がつくるカルスト地形

公開日

中国の桂林では、平らな土地や川のそばから、細長い山が何本も立ち上がっています。火山が一つずつ噴き出してできたようにも見えますが、主役は噴火ではなく、水による岩石の溶解です。

かつて海でできた石灰岩が陸に現れ、割れ目へ入り込む水に少しずつ溶かされました。低い場所が広がり、その間に岩の塊が残ることで、塔のような地形が生まれます。ただし、石灰岩があればどこでも桂林と同じ景色になるわけではありません。

塔の材料は、海で生まれた石灰岩

石灰岩は主に炭酸カルシウムからなり、浅い海に積もった生物の殻や骨格などが固まってできる場合があります。桂林の山々の材料も、地上の土ではなく古い海の堆積物でした。

その後の地殻変動などで海底の地層が陸へ現れ、雨や川の作用を受けるようになりました。海でつくられた岩が、陸上で山の形になる。景色の成り立ちは、水で削る段階より前から始まっています。

水は、地殻の変形などで生じた割れ目や、層の境目から岩の内部へ入ります。岩の塊が外側から均一に小さくなっていくわけではありません。水の集まる場所ほど溶けやすいため、残る部分との間に差が広がるのです。

雨水が石灰岩を溶かす、小さな化学反応

雨水は空気中の二酸化炭素を取り込み、地面にしみ込むと、根や微生物の呼吸で二酸化炭素が多くなった土壌も通ります。その結果生じるのが、弱い酸性の水。これが石灰岩の成分を、少しずつ水に溶ける形へ変えていきます。

熱で岩が溶岩になる「融解」ではなく、水の中へ成分が移る「溶解」です。一回の雨で山が消えることはありませんが、水が繰り返し流れれば割れ目は広がり、地表には溝やくぼみが発達します。

川が砂や礫で岩をこする物理的な侵食も加わるので、化学反応だけで完成するわけではありません。溶けること、削られること、崩れること、運び去られることが重なり、桂林の地形が生まれました。こうした石灰岩などの溶解に特徴づけられる地形の総称が、カルスト地形です。

石灰岩の割れ目から始まるカルスト地形
上段は割れ目を流れる水が石灰岩を溶かす断面。下段は溶食などが進んで地上に峰が残り、地下に洞窟や水路が広がる断面。

特定の地点の復元図ではありません。峰林や峰叢の違いには、溶食だけでなく岩の厚さ・割れ目・地下水・河川・地盤の運動が関わります。

つながった峰と、離れて立つ塔の違い

桂林周辺には、山の根元がつながり、その間にくぼみを抱えた地形もあれば、平らな低地から山が独立して立つ地形もあります。前者は峰叢、後者は峰林と呼ばれ、同じ地域に異なる姿が見られます。

水が低い場所を溶かし、川が土砂を運び去り、山の足元を横方向にも削ると、峰の間の低地が広がる方向へ変化します。上へ伸びる山を新しく足しているのではなく、周囲が低くなることで、高い岩の塊が際立つのです。

ただし、峰叢がどこでも一定の順番と速さで峰林になるわけではありません。岩石の性質、地下水位、川の高さ、地盤の隆起、過去の環境が違うからです。「若い山、古い山」という一つの尺度より、どこを水が通り、どこへ削った物を出せるかが重要になります。

雨の多さだけでなく、川の出口が必要な理由

桂林は湿潤な亜熱帯にあり、水が地形を変える機会に恵まれています。植物の育つ土壌は水の化学的な性質にも影響し、雨水や地下水が石灰岩の中を移動する働きを支えます。

しかし、水を注ぐだけで塔状の山ができるわけではありません。溶けた成分や削られた土砂を、外へ運ぶ経路が必要です。低い盆地を流れる漓江などの河川と、周囲から入る水は、その排出を担っています。

出口の条件が変われば、地下水面や侵食の進む高さも変わります。溶けやすい岩、豊かな水、水を排出する河川、そして経過した時間。桂林の景観はその組み合わせで生まれたもので、世界の石灰岩地帯がすべて同じ姿になるわけではありません。

地上の塔と地下の洞窟をつなぐ水

地表から入った水は、地下の割れ目も広げます。やがて人が入れるほどの空洞や、地下を流れる水路になることがあります。地上に川が見えない場所でも、水の移動が止まっているとは限りません。

石灰岩の地下水は、岩の細かい隙間をゆっくり進む水と、広がった割れ目や洞窟を速く通る水が混在します。地上の水路だけをたどっても、地下のつながりをすべて推測することはできません。雨のあとに離れた泉の水量や濁りが変わるのも、そのような経路があるためです。

洞窟の中では、逆に水から炭酸カルシウムが析出し、鍾乳石などをつくる場合があります。岩を溶かした水が、別の条件では石を成長させる側に回る。地形は一方向に削られるだけでなく、物質が移り、再び積もる過程も含んでいます。

桂林の山が高く見える、低地との対比

桂林の塔状の山が印象的なのは、峰の高さだけでなく、足元の平らな土地との高低差が急に現れるからです。なだらかな丘が何段も続く景色とは違い、山の輪郭が際立ちます。

山の表面の植生は岩を隠しますが、下の骨格は石灰岩です。雨、水路、地下の空洞、川がつくる低地を一緒に考えると、山々が無作為に立っているのではなく、水の働いた場所と残った場所の対比だと分かります。

桂林の景色は、岩が持ち上がった結果だけでは説明できません。海でできた岩が陸へ出て、その周囲が長い時間をかけて失われた結果でもあります。山の形を理解するには、今ある山だけでなく、かつてそこにあって運び去られた部分も思い浮かべる必要があるのです。

参考資料

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