大西洋の中央を長く走る海底の山脈、大西洋中央海嶺。その大部分は海の下にあるのに、アイスランド付近では大きな陸地が現れます。海嶺の上というだけなら、なぜ同じような島が延々と続かないのでしょうか。
アイスランドでは、プレートが離れる境界に、特に活発なマグマの供給が重なっています。海底をつくる通常の働きに、より多くの火成活動が加わり、厚い地殻と火山の地形が海面上にまで達した場所なのです。
プレートが離れる場所に生まれる新しい岩
大西洋中央海嶺は、両側のプレートが離れていく境界です。その下でマントルの物質が上昇すると、圧力が下がることで一部が溶け、マグマが生まれます。
地球の内部がどこも液体で満たされ、その液体が隙間から漏れているわけではありません。マントルの大部分は固体であり、温度と圧力の条件が変わることで部分的な融解が起こります。
固体なのに上昇する、という点も不思議に感じるかもしれません。岩石は短い時間では硬くても、高温のもとで非常に長い時間力を受け続けると、ゆっくり変形できます。固体の流動と、マグマとして液体になることは別の過程なのです。
マグマが冷えて新しい岩になることで、離れていくプレートの間に新しい海洋地殻が加わります。海嶺は、大陸同士が押し合って高くなる山脈とは成り立ちが異なります。
海嶺に重なる、異常に多いマグマの供給
通常の海嶺も周囲の深海底より高い地形ですが、多くは海面には届きません。アイスランドでは、ホットスポットと呼ばれる活発な火成活動の領域が海嶺と重なり、通常より多くのマグマが供給されてきました。
その結果として地殻が厚くなり、溶岩などが積み重なることで、海面上の陸地が維持されています。二つのプレートが衝突して島を押し上げた、という説明ではありません。
概念断面です。深部のマントル・プルームの形や深さを確定的に描いたものではありません。矢印は炎や地下全体の液体を表していません。
海嶺とホットスポットは同じものでもありません。前者はプレート境界の種類、後者は周囲と比べて活発なマグマ供給がある場所を指す見方です。アイスランドでは、その二つが同じ地域で重なっています。
ホットスポットの深部には研究上の議論も
ホットスポットを説明する有力な考え方は、深部から高温の物質が上昇するマントル・プルームです。しかし、その起源の深さや形、マグマが多くできる仕組みの細部まで、すべての研究が同じ結論というわけではありません。
USGSも、ホットスポットの成因には科学的な議論があると説明しています。地震波で内部の速度を調べたり、岩石の成分を比較したりすることで、直接見えない地下の構造を検討している段階です。
したがって、地下に一本の炎の柱が立ち、そこから島が噴き上がったような図は誤解を招きます。比較的確かなのは、海嶺の拡大と、周囲より多いマグマの供給が、この地域の陸地形成に重要だという点です。
陸上で観察できるプレートの境界
シンクヴェトリル周辺では、割れ目や沈み込んだ地形が陸上に現れ、プレートが離れる地域の特徴を観察できます。普通なら海底に隠れている現象を、人が歩ける場所で見られることがアイスランドの特徴です。
ただし、一つの割れ目の幅だけを測れば、大西洋全体の拡大がそのまま分かるわけではありません。変形は幅のある地域へ分散し、火山活動や断層運動も関わります。境界は地図に引いた一本の線ほど単純ではないのです。
プレートが離れるなら、島は二つに割れて消えてしまわないのでしょうか。離れる場所へ新しいマグマが入り、冷えて岩を補うため、単に既存の地面が引き裂かれるだけではありません。古い岩が両側へ運ばれ、新しい岩が加わるという、動きながらつくられる土地です。
スルツェイ島に見える、建設と侵食の競争
アイスランド南方のスルツェイ島は、1963年に始まり1967年まで続いた噴火によって生まれました。人間が観測できる時間の中でも、海底の火山活動が新しい陸地をつくる例です。
しかし陸地は、できた後も波や風によって削られます。噴火がつくる量だけでなく、岩の固さや侵食の速さによって、残る島の姿は変わっていきます。
アイスランドが大西洋に浮かぶ大きな島であるのは、プレートの隙間があるからだけではありません。そこへ岩を供給し続ける働きと、削る働きの差が、長い時間をかけて海面上の地形として現れています。